ほたるの星★ロケレポート  
機内〜萩ロケレポ by みずは
5/9・5/105/11

5月9日(金)
「お先に失礼します。月曜日はお休みを頂きますのでよろしくお願いします。」

  時計の針が午後5時を指した瞬間、心とは裏腹に、私はおもむろに席を立って、そう周囲に告げた。会社の人たちから見えないところまで来ると、後はとにかく、ダッシュ、ダッシュ、ダッシュ!! それが功を奏したのか、羽田空港には、予定よりも少し早く着いた。でも、たっぷり余裕がある訳でもなかった。搭乗口で時計を見ると、搭乗開始まであと5分だ。

 搭乗開始のアナウンスから少し経って、私は機内に入った。座席に着いて、まず機内誌を手にした。何気なく開いたそのページはなんと、征良さんのエッセイだった。機内誌にも書かれているのか、と思いながら読み進めると、ボストンにいた頃夕方に家族で行ったクィンシー・マーケットのことが書かれていた。人や物でいっぱいの、クィンシー・マーケットの賑やかな光景がぱっと脳裏に浮かんだ。私がボストンに留学していた頃、マーケットへ行ったのは殆ど土日の昼間だったが、1回だけ平日の夕方にも行ったことがある。その時の記憶として残っているのは、外で嬉しそうにアルコールを飲んでいた人たちの顔だ。あそこは人々を笑顔にしてくれる場所、そんなイメージがある。1軒1軒お店をのぞいて見て回るのが楽しかったな、なんて5年前の思い出に浸っていた。

 そこへ突然、まったり気分を吹き飛ばすようなアナウンスが私の耳に届いた。

 「お客様のお呼び出しを申し上げます。○○○○様、△△△△様、オザワヨシユキ様、いらっしゃいましたら、恐れ入りますが、お近くの客室乗務員までお知らせ下さい。」

 頭の中に広がっていた懐かしいクィンシー・マーケットの風景は、あっという間にクエスチョンマークの洪水に押し流されてどこかへ消えてしまった。オザワヨシユキ…? それって、ユキヨシの言い間違い? どういうこと? 本当に、あの、小澤氏なの? 平日は仕事があって東京に戻ってきていて、週末は山口でロケ、というのも十分考えられる話だ。そうなのかもしれない…。

 そんなことを考えながら機内の前方を見ていると、クエスチョンマークがエクスクラメーションマークに変わった。二人の男性が入ってくるのが見えたのだ。一人はメガネをかけている人で、もう一人は“チャパツのおにーさん”だった。メガネをかけている人は、紛れもなく、小澤氏だ。やっぱりそうだったんだ!! とすると、“チャパツのおにーさん”は小澤氏のマネージャーさん、なのかなあ? 小澤氏の姿を目で追うと、私と反対側の窓側で、私より1列前の席に着かれた。小澤氏は、前後の人に挨拶をしたり、子どもたちに「元気?」なんて声をかけていた。やっぱり気持ちのいい人だなあ、と見ているうちに自然と私の口角が上がっていくのが分かった。

 飛行機が離陸し、しばらくするとコックピットからの放送で、富士山が見えるという。アナウンスに従って外を見ていたら、真下に富士山の火口がきれいに見えた。ちょっと怖いけど、でもこんな光景を見られることはそうそうないかもしれない。ふと、反対側の窓際を見ると、小澤氏は機体にもたれかかるようにしていらした。きっとハードなスケジュールをこなされているんだろうな。移動時間は貴重な睡眠時間なのだろうな。ゆっくりお休み下さいね。そう、心の中でつぶやきながら、私は再び窓を眺めた。街灯りや漁船のライトがいくつも見えた。その光の数だけ、私の心にも灯りがともされた気がした。

 機内誌を読んだり、手帳に思ったことを書き留めたりしていると、あっという間に着陸態勢に入った。山口宇部空港に着陸し、飛行機から到着ロビーへと向かう時、私はある地点まで小澤氏より後ろにいた。前にいらっしゃる小澤氏に「おはようございます」と声をかけている女性がいた。多分、『ほたるの星』で小澤氏と共演されている女優さんなのであろう。その様子を見ていて、小澤氏がお仕事モードに切り替わっているな、という印象を受けた。飛行機と空港の建物の接続部分が2階で、到着ロビーが1階なので、空港内に入ってすぐ、エスカレーターと階段が並行して1階への通路になっている場所があった。小澤氏はエスカレーターに乗られた。もし、その後に続いて私もエスカレーターに乗っていれば、話すことも出来たかもしれない。でも、既にお仕事モードに入っているところへ声をかけるのは無粋というもの。私は一気に階段を駆け下りて、小澤氏よりも先に到着ロビーに着いた。空港の建物を出るときにふと振り返ったら、どうも『ほたるの星』ご一行様を、どこかの旅館の半被をきた方が迎えに来ているらしかった。その様子を見て、撮影現場もこんなふうに和やかな感じで進んでいるのかな、と笑顔になりながら、私も迎えに来てもらっていた車に乗り込み、萩へと向かった。

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