ひとくちコラム バックナンバー 1 2 3 4 5 6 7 8 番外編 
第8回 爽やかな微笑みとともに
by みずは

 とうとう終わってしまった、「人情とどけます」。丸橋からまどかと清太郎がかけてきて、自分の方が早かった、と言い合いをして、お互いに背中合わせになるのだが、その後にお互いを見て微笑む、という最後のシーンの撮影を、実は見ることができた。11月の二次ロケ、午後の撮影で撮られていたのだ。午後、小澤氏に話しかけた後、気が抜けてしまった体をもう一度しゃんとさせて、ようやくの思いで、丸橋のたもとの右横に立って、強風に耐えながら見たシーンだ。

 丸橋から走ってきた勢いがついたまま、あそこで立ち止まるには、足場が滑りやすそうだ、と思っていた。というのも、あの橋のたもとには、とても細かい目の砂利が敷かれていたからだ。「人情〜」を撮影するところでは、砂利を敷いて、コンクリートを隠していたので、そこも他の場所と一緒で砂利が敷かれてあったのだ。10月に撮影を見学に行った時、スタッフの人が砂利を敷いてあったコンクリートの上を箒で掃いていたことがあった。すかさず、そばにいらした小澤氏はそのスタッフの方に、撮影用に砂利を敷いているのかという質問をされていたのを私は聞いていたことを思い出した。

 話を元に戻そう。いつものように、テストが行われ、本番、となった。本番の時だっただろうか。ちょっと記憶が定かでないが、案の定、まどかの足元が砂利に奪われてバランスを崩してしまってやりなおし、となってしまった。無理もない。本上さん、小澤氏をはじめ、スタッフの人たちも笑っていた。カメラのフレームに入ってはいけないと思っていたから、声しか聞こえなかったけれど、雰囲気のよい笑い声がこだました。撮影している人たちの笑顔が目に浮かぶような、いい声で笑っていた。

 撮影現場では、「本番!」の声がかかるその度に、周囲に緊張感が走った。それは、役者さんであろうと、撮影スタッフであろうと、ワープステーションのスタッフであろうと、ただの見学者である私たちであろうと、その場にいた全員が、程度の差こそあれ、感じていたはずである。背筋をピシッとまっすぐにし、息をひそめて、目を見開くような、そんな凄みを持った静寂が訪れるあの瞬間。10月に行った撮影現場は、土曜日だったこともあるのだろう、見学者も多くて、見学者を静かにさせることにスタッフはかなり気を使っていたように感じた。だが、11月の二次ロケを見学に行った時は平日で、見学者もまりりんさんや私を含めても片手で足りてしまうほどの人数だったからか、撮影関係者から感じられる気迫が、より撮影そのものに集中させていく過程を肌で感じられたように思った。

 けじめのある撮影現場で見た関係者の笑顔や笑い声は、とても澄んでいてきれいなものだった。例え何のことについて笑っているのかがわからなかったとしても、見聞きしているこちらまでもが、ふっとにこやかにさせられてしまっていて、ヤラレタ、と思った。見上げると雲一つなく広がった、爽やかに澄みきったあの青空は、撮影関係者の笑顔そのものだ。そして、そんな、メリハリのある撮影現場を少しでも共有させてもらえたこと、機会が与えられたことに感謝したい。