第6回 風吹きすさぶ 筑波より
by みずは |
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残すところ、「人情とどけます」の放送もあと2回になった。今回、見ていて思い出したのは、風の強さだ。柳の枝のそよぎ方、軒下にかかる暖簾のたなびき方を見て、撮影現場で感じた風の冷たさが蘇ってきて、寒くなってしまった。
「暖かい格好をしておいで。寒いから。」 2次ロケ行きを決めた私に、まりりんさんがかけてくれた言葉だ。筑波は、“筑波おろし”が吹くことで有名なので、筑波に不慣れな私を気遣って下さったのだ。でも、“筑波おろし”の言葉すら理解しないまま、とりあえず、出来る限り暖かくして見学に行った。
“おろし”とはどういうものだろうか。冬になると日本列島に吹く北西の季節風が、山を越えて太平洋側に入ると、冷たい強風となって吹き降りる場合がある。これが“おろし”(fall
wind)だ。おろしは、その地域の山の名前をとって特有の名前がつけられている場合が多い。関東では榛名(はるな)おろしや筑波おろし、関西では六甲おろしが有名である。また、おろしは、関東地方で「からっかぜ(空風または乾風)」といわれるように、乾燥した風なのである。
“おろし”を起こす山の地形には、三つほど特徴がある。一つ目は、高さが1,000メートルから1,500メートルぐらいの山であること。しかし、富士山のように3,000メートルを超えるような山では、風が山を越えることが出来ずに迂回するため、おろしは吹かない。二つ目は風下側の斜面が急であること。そして3つ目は風下側に広い平野が広がっていること。これらが揃うと“おろし”が吹くのだ。
ロケ地に着いてから午前中いっぱいは、強い風が吹いても、それほど寒いと感じなかった。きっと、あちこち走りまわったり、ひとりの孤独感を感じていたり、現場独特の緊張感を共有していたりしたこともあって、気が張っていたのだろう。だが午後、小澤氏とお話させて頂いた直後、緊張が全部解け、腑抜け状態になった挙句に、ひとりで走り回っていた時の疲労感がどっと襲ってきて、へなへなと椅子に座ってしまった。しばらくして外へ出たら、風がものすごく冷たい。目で感じる気温と肌で感じる気温が全然、違っていた。太陽は傾いているけれど、この光線の強さなら、もっと暖かくていいはずだった。「からすと一緒に帰りましょ」そんな「夕焼け小焼け」の歌詞を描いたような空が、頭上にあった。だが、その時に吹いていた風は、冬空で今にも雪が降りそうな天気の時に吹く風によく似ていた。かなり着込んでいるのに、じっと立っているのがつらい。撮影を見続けようと思ったが、元気も集中力も風に奪われて、結局、挫けてしまった。
この経験から、あの風を見ただけで、見学の時に感じた寒さの感覚が戻ってきた。日差しがあっても、あれだけ寒かった撮影現場だったのだ。夜の撮影では、もっと厳しく、体力もかなり消耗しただろう。そんな過酷な条件の中、あの薄着の格好での、俳優さんたちのあの熱演に、改めて頭(こうべ)を垂れたくなった。
風吹きすさぶ 筑波より
江戸っ子の粋 醸し出す
飛脚の法被 うすくとも
あつき人情 とどけます (みずは)
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