『運命の再会』('03.2.28放送)
by みずは |
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ようっす! みんな元気か? あわふいて倒れちまったご隠居さんを竹庵先生に診察してもらったんだが、「まるで今の政情と同じだなあ」と言いなさる。本当かぁ? あてになんねえからなあ、竹庵先生は…。ご主人がご隠居さんに聞こえるように女将さんの名前を出しても、あんなに女将さんの名前を聞けば文句ばかり言っていたご隠居さんの口から文句の一つも出ねえ。こりゃあ、相当わりいな…。
おっと、のっけからちょいと暗くなっちまったが、今日は今年の店じまい。明日からは、めでてえ正月だ。おかみさんが、女将さんやご隠居さんの代わりにと、決めの挨拶をしてくれた。まどかがちょいとおかねさんをほめたら、「何ならこのまま私が女将になろうか?」だって? …ったく。ちょーっとほめるとすぐこれだからなあ。そこへ、火消し十八組のおかしらとおくみさんがやって来た。おかしらもご隠居さんの様子を気にして下さったらしい。しかし、おくみさんは、といえば、まどかの腕を組んで…。まどかは友吉っつぁんとおいらに助けを求めていたが、おいら知〜らねえっと。友吉っつぁんはおくみさんのまねをしておいらの腕に手ぇ回してきやがった。おいっ、てーげーにしな!!
除夜の鐘が鳴り響く夜の町を、人相書きを見せながら彦次郎を探しに歩いたんだが、何の手がかりもつかめやしなかった。どこにいるんだ、彦次郎?
年が明けると、ご隠居さんは起き上がって初詣でに行きたいと言い出した。よぅし! まどかとおいらで代わりばんこにご隠居さんを背負って町に出たんだ。おいらがご隠居さんを背負っていると、「こうしてると、私はまるで神輿(みこし)だねぇ」と言いなさった。へへ、ちげえねえ。「私ゃ子どもの頃から祭りが大好きでねえ。祭りだ、祭りだ、わっしょい、わっしょい!」 そんなご隠居さんの言葉を受けて、まどかとおいらは、わっしょいわっしょい、と言いながら、ご隠居さん神輿を担いで町を練り歩いたんだ。
甘酒茶屋で甘酒を飲みながら、ご隠居さんがこんな話をしてくれた。「わっしょいっていうのは、“和一緒”、“人々の和が一緒になる”ってとこから来ているんだよ」と教えて下さった。「私の小言が過ぎて、十六屋は和一緒どころの騒ぎじゃなくなっちまったけど…」 そんなご隠居さんの話に耳を傾けながら、おいらの目に飛び込んできたのは、あっ?! ご隠居さん、すまねえ、ちょいと用事を思い出しまして…。まどかに、弟に似た男を見つけたことを耳打ちした。まどか、ご隠居さんを頼んだぜ。すぐさま弟がいた方に走っていったが、見あたらねえ…。一体、彦次郎はどこへ行っちまったんだ?
その夜、ご隠居さんがなくなった。おいらは豆八まで一っ走り行って、女将さんと八ノ助さんを連れて来たんだ。ご主人の茂上衛門さんの話だと、ご隠居さんは、皆で十六屋の暖簾を守ってくれ、女将さんに憎まれ口ばかり叩いて申し訳なかったと伝えてくれ、と言っていたってぇじゃないか。おいら、もう胸がいっぱいになっちまった。ご隠居さん…。
ご隠居さんがなくなって数日後、十六屋は新しい商売を始めることにした。町飛脚、てぇ看板を掲げた。ようは、近間の文を届けるってぇ、女将さんが前々から考えていなさったことを実行させることにしたんだ。女将さんが腰につけて走りまわれるようにと用意して下さった文を入れる道具や、おいらが飛脚の合図にと鈴をつけて走ることを提案したら、多いに盛りあがった。そこへ女将さんが、実はみんなに知っておいてもらいたいことがあると言い、まどかが女であることを告げたんだ。みんなは驚いていた。特に、おくみさんはひどいと泣き叫んで店から飛び出しちまったくらいさ。無理もないけどな。
夕方、まどかが何やら話しかけてきた。文を届けた先で、どうもまどかのおっかさんらしい人の手がかりをつかんだらしいんだ。でも、会うのをためらっているんだよな。まどか、お前、おっかさんに会うために江戸に出て来て、男のなりして走りまわってたんだろ? 今、会わなかったら、今度会おうと思った時にはもう会えなくなっているかもしれないんだぞ? 今は何も考えずにおっかさんの胸に飛び込んでいくことが大切だと思う。そう、まどかに告げると、まどかはおいらにうなずいて見せた。そのまどかの表情と言ったら…。お、会いに行く時は娘姿で行けよ。十数年ぶりにあらわれた娘が男のなりした飛脚人じゃ、おっかさん腰抜かしちまうわ。
翌日、娘姿のまどかはそのおっかさんに会いに出かけたんだ。しかし、店の戸を締める時刻になっても帰ってこねえ。一体どうしちまったんだろうか? 心配していると、まどかが帰って来た。おっかさんに会えたし、おっかさんに新しい所帯があった訳ではなかったらしいのに、妙に浮かねえ顔をしているじゃねえか。まどか? するとまどかは泣き出した。きっと、つらいことがあったんだよな? こういう時は、泣きたい時は、泣けばいいんだ。おいらはそっとまどかを抱きしめてやったんだ…。
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