小澤征悦氏ご本人や小澤氏の出演作品ゆかりの場所を訪ねる、うそざれんのメンバーがお伝えするレポートです。

  ●第6回 UP!
「憧憬〜やさしさにつつまれたなら〜」
by みずは
  ●第5回 UP!
「回想〜オザワオザワで半年過ぎて〜」
by みずは
  ●第4回 UP!
「人情届けます」ロケレポート
<再会〜神様は、いる!>

by みずは
  ●第3回 UP!
「人情届けます」ロケレポート
<11/28編>

by まりりん
  ●第2回
「人情届けます」ロケレポート
<11/27編>

by まりりん
  ●第1回
遭遇〜それはまったくの偶然だった〜
by みずは
 
 
 

 空を仰ぐと雲ひとつない青空が広がっていたその日。私は「人情とどけます」の撮影が行われている場所へと向かった。

 前日にまりりんさんと電話でお話し、この日が撮影を見るのには良い日であると聞いていた。こんな機会、滅多にあるものではないし、やっぱり行くしかない。

 朝9時20分。撮影場所に到着。開園時間まで10分あった。入園料を支払う時、まりりんさん曰くの撮影所のスタッフ“瓦版屋のおじさん”が、園内撮影があることを教えて下さった。この時は、「それを目当てで来たんですから〜」とは言えなかった(笑)。 いま考えると、別に遠慮をすることは何もなかったのだけれど。色々とお話を聞かせてくれた後、オープンセットへ行くことを勧められた。昨日、オープンセットで撮影が行われていたってまりりんさんが言っていたっけ。きっと普段は見られない場所なのだろう。とりあえず行ってみることにした。

 園内に足を踏み入れると、既にNHKのスタッフや俳優さんたちの姿が。小澤氏も目の端で捕らえたが、まずはオープンセットへと走っていった。もの珍しいので持って行った使い捨てカメラにパチリ。

 開園を知らせる放送が流れたので、その場を後にし、園内へと戻った。園内を歩いていると、お堀のそばの柳の木の下にいる小澤氏を発見。ちょんまげをつけ、着物の上から黒地のウィンドブレーカーを羽織って、煙草を吸っている。しかも、おひとりでいらっしゃる。近くまで行ったが、真横に立つのは気が引けたので、少し離れた場所にあった橋を歩いた。

 橋の上で小澤氏の方を向くと、目が合ったので、会釈をした。すると、会釈を返して下さり、「おはようございます」と声をかけて下さったので、私も挨拶を返した。小澤氏の方からお声をかけて下さったことに、まず驚いた。そして、誰に対しても礼儀正しいお人柄がしのばれて嬉しかった。でも、多分私のことは覚えていらっしゃらないだろうな。そう思いながら、ひとりで園内を散歩しつづけた。

 撮影所のスタッフの黄門様とお話し、この撮影所内のお勧め観光スポットなどを教えて頂いた。小澤氏は本上まなみさんとそのマネージャーさんらしき人とお話している。やがて小澤氏がお土産屋さんに入ったところが見えたので、後を追うように、私もそこへと入った。この間のことお聞きしたかった。でも、どうやって話しかけよう? 何と声をかけて良いのか分からない私は、にこっ、と笑顔でご挨拶した。すると、また小澤氏が声をかけて下さった。

「以前、カフェでお会いしましたよね?」

びっくりした。こんな言葉を小澤氏からかけて下さるなんて思ってもみなかったから。まさに、現実は小説より奇なり。すごい! 覚えていて下さったんだ!!私にとっては重大事件だった先の遭遇も、小澤氏にとってはひとりのファンとお話したこととしてのご記憶はあっても、顔を見たくらいでは思い出せないだろうと思っていただけに、嬉しかった。

 その後、小澤氏は再び本上さんのところへお話に行かれたので、私は園内スタッフの方に教えて頂いたお勧めスポットを散歩して回ることにした。

 大店街(おおたながい。今でいう所の商店街)のセットとなっている場所へ戻って来ると、NHKのスタッフに呼び止められた。小澤氏が走るシーンの撮影中らしい。テストの時はちらっと横から見ることができたが、本番はカメラのアングルの都合で見られない。仕方がないので、耳をダンボにして、せめて声だけでもと、横でじっと待機していた。

 撮影はいつもテストが2回あって本番という順序でおこなわれる。そのシーンもそれにのっとっておこなわれた。小澤氏が走り抜けた所を横から見ていたが、お茶目な一面を見た。走りながら「一等賞〜」と仰ったり、小道具の使い方に悩んでいらしたり。うーん、サービス精神が旺盛な人だなあ。ますますファンになってしまうではないですか。そして本番の声がかかる。本番が終わるとカメラでチェックをし、OKが出てそのシーンは終了。

 実にひとつのシーンを取るのに最低でもこれだけのことをするのだ。もちろん、本番が1回で終わるとは限らないし、ハプニングだって起こりうる。そんな状況の中、役者さんも撮影スタッフも、あらゆることに気を配りながら、順調に撮影を進めようと努力している。この努力には、本当に頭が下がる思いだった。

 その後は、子どもたちを中心としたシーンの撮影を行っていた。その間、小澤氏は本上さんと彼女のマネージャーさんと一緒にストーブを囲んで3人でお話をしていた。この日は冷たく強い風が吹いていたから、お風邪など召されないように…と思いながら、私は園内散歩へと出かけた。

 色々なところをふらふらと歩いていると、次のシーンの撮影に入った様子。カメラの場所から考えると、正面から見られるはず。大店街の端に行き、撮影風景を見た。ふと横を向くとまりりんさんの姿が。その後は二人で撮影を見学した。まりりんさんはこのシーンが原作のどこにあたるかを教えてくれた。そう言われれば、そんな場面が原作にあったなあ。まったく物覚えが悪い私なのである。言われるまで、どんな場面があったっけかなあ?などと思い巡らすだけの私。困ったものだ。

 午前中にもうひとつ、別のシーンの撮影を見た。いつも、耳をすませて必死に台詞を聞き取ろうとするのだが、距離があったり俳優さんが私とは反対の方向を向いていたりしてほとんど聞き取れない。そんななかで、一番よく聞こえたのは女性スタッフの出す指示。監督さんなのだろうか、「まどかを中心に撮って下さい。重要なのはまどかです!」との言葉だった。それを聞いた小澤氏、何やら反論をしていたようで、小澤氏の言葉を聞いた人たちからどっと大きな笑い声が上がった。

 そのシーンの撮影の後、お昼休みに入った。私たちもこの休憩時間にお昼を食べた後、“瓦版屋のおじさん”や黄門様とお話した。この方々には本当にお世話になった。

 お土産物屋さんの辺りをうろうろしていた。すると、まりりんさんが私を呼んでいる。小澤氏はお一人で自動販売機で飲み物を買っていたところだった。もう、なんてラッキーなの?

 側に近付き、「小澤さん」と声をおかけした。以前、パソコンが出来ないと仰った小澤氏に、このホームページYukiyoshi Ozawa Maniac(YOM)のことを知ってもらえたらと、一部を印刷した紙をお渡しながら3人でお話をさせていただいた。私たちは海外の方も含め、皆で小澤氏を応援していることをお伝えした。小澤氏は

「いや〜、こっぱずかしいっすね〜」

と照れながらも、私の渡した紙を興味深く、嬉しそうに眺めていた。トップページの画像は「いつのだ?」と思い返されたりと、真剣に見ていた姿が印象的だった。最後に、

「皆で応援していますので、お体に気をつけて頑張って下さい。」
とお伝えすると、

「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」

そういいながら、小澤氏はまずはまりりんさんに、次に私に、姿勢を正してお辞儀をして下さった。私達もお辞儀を返した。ひとりひとりにお辞儀をして下さるなんて、何と謙虚な方なんだろう。私も見習わなければいけないな、と思う。
 この後、私は気が抜けてしまい、暫くベンチに腰掛けていた。今日あったことを色々と思い浮かべてみて、つくづく来て良かったと思った。その後、小澤氏と本上さんとの撮影シーンも見たが、午後は更に風が冷たく、日も傾きかけてきたので、引き上げることにした。小澤氏が体調を崩されないことを祈りながら…。

 先に書いた遭遇レポートの最後に、江國香織さんのエッセイ『泣く大人』からの抜粋を載せた。実は、あの抜粋箇所は「再会」というタイトルのなかに収められている。その「再会」の最後の方に、こんな言葉があった。

やっぱり神様はいるな。*

私もそう思う。今回、撮影がおこわれることは事前にわかっていたし、行けば小澤氏がいらっしゃることは確実だった。でも、私のことを覚えていて下さるかどうかは全く自信がなかった。それだけに、覚えていて下さったことがわかった時は、本当に嬉しかった。でも、何よりも、今回一番喜ばしい出来事は、こうしてYOMの存在を小澤氏に直にお伝えすることが出来たこと、そしてそれを大切そうに眺めていて下さったことだ。これは、神様のおかげに違いない。更に欲を言えば、これをきっかけにパソコンにも興味を持ってくれるといいのだけれど…。そこまで望むと、神様、怒っちゃうかな?

*『泣く大人』P.162より
著者:江國香織 発行:世界文化社 発行日:2001年7月30日