『Pちゃんがんばれ・ZEPに泣く』 by と
人様に多大なご協力をお願いして入手したビデオでやっと見たドラマ。それだけのことはあった!小澤氏演じる組長(西田敏行)の息子Pは「飛翔(かける)」という名がありながら「ひーちゃん=Pちゃん、P」と親にまで呼ばれている、気の優しい青年。ヤクザの息子らしく悪態もつくが、お向かいの幼馴染みユカちゃんに恋心を抱く、いがぐり頭の純朴なヤツである。西田敏行がものすごい怪優ぶりを発揮する傍らで、なかなかいい味を醸し出している。それにしても西田敏行の二役はすごい。ドラマ自体非常によくできていると思うが、その役者っぷりだけでも見る甲斐がある。
■悪者がいない
とにかくみんなイイ人、芯から悪いヤツが出てこない。言っていることは、いくらターゲット本人が死にたいと言っているとはいえ保険金替え玉殺人、自殺幇助の類いである。が、これが全然悪くない。犯罪計画が軽妙洒脱な予行練習として劇中劇で予告され、息子Pは遺体の確認での演技練習までするのだが、この時フと一瞬、練れた役者たちの立ち稽古を盗み見しているような気になってしまった。このリハーサルが根底におかしみを漂わせ続けるのである。殺したいはずの男に酒を飲ませてやり、温泉へ誘い、メシを食わせ、結果的には男を自殺から引き戻してしまう。一体、殺したいんだか死んでほしくないんだか。死んでほしいのに、殺したくないんだか。
瓜二つのふたりの男それぞれの話が西田敏行の二役で平行して展開し、劇中劇のように犯罪計画が演じられ、それらが重なって行く。ふたりの男は顔を合わせ、最後は棺桶の中と外で向かい合う。リハーサルされた犯罪は、死に役が逆転した格好で、事故として現実になる。二重構造が徐々に1本に収束し、そして誰の手も汚れないんである。
「殺す方法なんざいくらでもあるんだ」「命は大事だよ。まずは温泉行って、酒飲んで、旨いもんでも食おうや」「そうだよおじさん、死んじゃだめだよ」「崖からクルマごと落っことしちゃやいいんだよ」…絶対に人など殺せなさそうな、心優しい瓜生組のヤクザたち…。
■Pちゃん
幼馴染みのユカちゃんは結局北大職員にとられちゃうしなあ。お茶汲みしたりコンビニに買い出しに行くシーンがやたらあるんですよね…小澤氏。背中をかがめて流しに向かってる姿がなんだか甲斐甲斐しい(笑)。親父さんが死んで遺体の確認をする芝居の練習までしていて、実際にその場面がきてしまう。小澤氏としては2バージョンの『親父の死を悲しむ息子』を披露するわけなのだが、その2回目、実際に死んじゃった確認作業の時がドラマのピークか。『犯罪の予行演習で練習してたのにほんとに死んじゃって』警官の前でぐっとこらえるヤクザの息子は勿論、劇中リハーサル時より心に沁みる。
親父は死に、失恋し、一路大阪へ向かう車中、気弱で冴えないPちゃんがようやく吹っ切れた笑顔を見せてくれる。性善説のサスペンス喜劇らしく、実に前向きで救いがあるエンディング。
■天国への階段
のっけから、ツェッペリンの「How Many More Times」のイントロが!そして編集でピタっとボーカル前で止まる!んが〜!なんだかツェッペリンのイントロ当てクイズのようなドラマだ!「Since
I've Been Loving You」、そして何と言っても「Stairway To Heaven」である!私のように思春期にZEPにメロメロになった世代が、作り手側のメインになったんだろうなぁ〜と想像するが、それにしてもここまでハマるとは、嬉しすぎる!!ドラマの盛り上がりとともに、ついに中盤でボーカル部分まで挿入される「天国への階段」、侘びしいような可笑しみにピタリと合ったもの哀しさ。
Pちゃんと親分に瓜二つの男は、保険金で買った新車で心気一転、大阪を目指す。背後には「Rock And Roll」、小澤氏に加えてツェッペリンも味わえるなんて、とにかく幸せなドラマ。。。 |